AI World Conference & Expo Boston 2018 参加レポ ート (前編)

近年、AI をテーマにしたカンファレンスや展示会は様々な場所で開催されています。今回は2018 年12 月3〜5 日にBoston で催されたAI World Conference & Expo 2018 に参加してまいりましたので、2 回に分けてレポートします。

イベント概要:AI WORLD CONFERENCE & EXPO とは

さて、今回は2018 年12 月3〜5 日にBoston で開催されたAI World Conference & Expo 2018 についてお 送りしたいと思います。

AI World Conference & Expo は、今年で3 回目を迎える、ビジネス色の強いAI イベントです。初回はサンフラ ンシスコで開催されたのですが、2 回目からボストンに場所を変更しています。対象とする参加者は技術者とい うより企業の意思決定層です。2018 年の今回は、2300 以上の企業や組織から3000 人を超える参加者が 見込まれています。3 日間のセッション数は全体セッション(エグゼクティブサミット、本会議)と分科会(セミナ ー、ワークショップ、個別トラック)を合わせて100 以上、スポンサー及び出展企業は85 社以上となっていま す。

Web サイトには次のように書かれています。「企業における人工知能の実践の現状に焦点を当てた、業界最 大の独立系AI ビジネスイベントです。3 日間のカンファレンスと展示会は、企業内でのAI の革新的な実装につ いて学びたいエグゼクティブ向けに設計されています。企業組織は相反する優先事項に直面しています。誇大 宣伝をはねのけ、自社のビジネスにおいてAI 技術を重視するよう決定するタイミングはどこですか?AI World は、この単一の目標を中心に編成されています。」 本レポートは、全体セッションの紹介と、出展企業の抜粋の紹介を中心とさせていただきます。 開催会場は、サウスボストンの臨海再開発地区にあるSeaport World Trade Center でした。会場付近はにぎ わっているのですが、会場から少し離れると商業施設も住宅もなく、閑散としていました。

セッション紹介

イベント内のセッションは以下のように分けられていました。

  • AI World Executive Summit IDC 主催。エグゼクティブ向けにAI の現状や将来像について、調査統計を交えて講演。
  • 本会議 キーノートセッションとパネルディスカッション。
  • 分科会1 エンタープライズAI の実装 WorkFusion によるAI 自動化ソリューションの紹介、ウェルスファーゴ(銀行)、ベルヘリコプター、 Facebook などによるセッションと、マサチューセッツ州、リバティ相互保険、サブウェイサンドイッチなどのパネル ディスカッション。
  • 分科会2 ビッグデータからAI へ ステート・ストリート(金融)のケーススタディ、アクセンチュアのセッション、パネルディスカッション。
  • 分科会3 AI とリアルタイムIoT 最初はDELL EMC によるインダストリアル・インターネット・コンソーシアムの紹介、その後、SAS やシステムイ ンテグレーターらによる製造業・工場施設などに関するパネルディスカッション。
  • 分科会4 ヘルスケアにおけるAI 調査会社やVC によるトレンド紹介と、ハーバード大 医科大学院、Partners HealthCare、 MetroHealth、Geisinger、Kaiser Permanente といった医療機関の取り組みに関するセッション。
  • 分科会5 製薬業界におけるAI ボストンコンサルティングによるトレンド紹介や、サノフィ、ファイザー、バイエル、アストラゼネカ、ノバルティス、 グラクソ・スミスクラインといった製薬会社の取り組みに関するセッションと、スタートアップ企業などを交えたパ ネルディスカッション。
  • 分科会6 新興技術 音声認識ソフトウェアのNuance 社による、コンタクトセンターをAI で強化するソリューションの紹介と、AI ソ フトウェアスタートアップやAI チップスタートアップらによるパネルディスカッション。
  • 分科会7 コグニティブコンピューティング テキスト、音声、画像、動画などの認識を取り入れたAI について。IBM Watson、MIT、その他コグニティブ AI のベンダー企業によるパネルディスカッション中心。
  • 分科会8 ビジネス戦略とAI Dell EMC によるトレンド紹介、Uber 社のカスタマーエンゲージメント事例紹介、コグニティブ検索の Sinequa 社によるソリューション紹介、MIT によるAI 人材に関するセッション。
  • スポンサーワークショップ エンタープライズAI の配備と拡大 function .AI 主催。「デジタル従業員」についてのセッションと、主にAI 企業を中心としたパネルディスカッシ ョン。
  • スポンサーセミナー1 エンタープライズにおける機械学習&深層学習 DeepSense.ai 主催。深層学習・強化学習についてのセッションと、ヘルスケアでの応用についてのセッショ ンと、パネルディスカッション。
  • スポンサーセミナー2 パーソナライズ医療とAI ハーバード大 医科大学院主催。UC サンディエゴ、MIT、ハーバードといった大学病院と、ファイザー、ロシ ュ、アッヴィといった製薬会社によるセッションとパネルディスカッション。

EXECUTIVE SUMMIT

まずは、1日目に開催されたExecutive Summit の概要をご紹介します。

1. THE AI-ENABLED ENTERPRISE IS CLOSER THAN YOU THINK

  • IDC の調査レポートを元にしたセッション。
  • AI は様々なところで活用されているが、まだ始まりに過ぎない。対話型AI を取り入れている大企業は21%程度。また、AI の精度はまだ不完全(自動運転車の事故や、顔認証をだます事例など)
  • 支出額から見た2018 年のAI ユースケースは、顧客サービスの自動対応($2.2B)、診断と処置($1.7B)、業務プロセス自動化($1.5B)、機器の予防保全($1.4B)、サイバーセキュリティの自動脅威防止($1.3B)など。
  • 実務上の課題は、適切なスキルの不足、学習データの所在、結果の説明性と責任、ポリシーや規 則などの合致性など。
  • 自動化のレベルに応じて人間と機械の役割が変わってくる。洞察を生み出す主体、決断をする主 体、決断を元に行動を起こす主体。
  • 自動化レベルの軸と、スコープの細かさ(システム全体、プロセス、アクティビティ、タスク)の軸を使ってAI を検討するというフレームワークのすすめ
  • 事前に検討すべきこと:どんなデータをすでに持っていて、どんなデータを今後集められるのか。意思決定の倫理性をどう担保するか。どこでパートナーの力を借りるか。
  • ビジネスプロセスにおけるAI の重要性を認識し、どの分野でAI を活用できるかの検討を始めるべき。その際、データサイエンスの枠を超えた専門性のポートフォリオを用意するのがよい。

2. BUSINESS MODEL TRANSFORMATION WITH AI

  • MIT スローン校のレポート「Artificial Intelligence in Business Gets Real」「Leading With Next-Generation Key Performance Indicators」を元にしたセッション。
  • 経営者の58%が、5 年以内にAI が自社のビジネスモデルを変えると認識
  • 調査結果を元に企業を4 グループに分けている。パイオニア企業、積極的に投資する企業、調査段階の企業、受け身の企業。
  • パイオニアとされる企業の9 割がAI 戦略を定めているし、6 割はAI によって新しい収益を得ている
  • Microsoft のAI 部門CTO の言葉を引用:「スケールするAI とは、継続的にAI の新しい実験を行い、システムの開発運用が連続的・継続的に改善できるようになっている、AI 中心の組織構造を企業が持っているということ」
  • ビジネスモデルとは、価値創造のモデルと組織運用のモデルの両面からなる。そのどちらもAI によって 変わっていく。
  • AI 戦略は「AI に向けての戦略」と「AI とともにある戦略」の2 段階。「AI に向けての戦略」は、経営層のコミットによってデータや対象ビジネスや人材の戦略を明確にし、実施のための目標を定めるもの。アンケート調査によればパイオニア企業はすでにできており、受け身企業はまだこれから。
  • 「AI とともにある戦略」は経営の在り方自体を変えるもの。AI を中心に据えた次世代KPI を定めたうえで、業績パフォーマンス管理やリスク管理が重要。破壊的イノベーションを実現する企業はこのような戦略を取ることもある。持続的イノベーションを重視する成熟企業であっても、意識しておくことを勧める。

3. HARNESSING FINANCIAL DATA: HOW AI CAN MAKE RETAIL BANKING AND PAYMENTS BETTER AND SAFE

  • IDC 金融部門のリサーチディレクターによるセッション。
  • アメリカで銀行口座を持っていない人が小切手をもらった場合、口座開設に最低でも1 時間かかり、その新しい口座に小切手を入金しても使えるようになるのは3 日後。時間がかかるのは人間がチェックする工程があるから。一方でP2P 送金アプリは自動化されているので秒〜分単位(※Venmo などのアカウント開設には銀行口座が必要なので、この比較は少々フェアではない)。
  • 金融サービスでAI が有効とされるシナリオ カスタマージャーニー(≒顧客体験)の改善、攻撃に対する防御、業務運用の効率化、新しい収益構造の発見・強化
  • パイオニアとされる企業の9 割がAI 戦略を定めているし、6 割はAI によって新しい収益を得ている
  • 情報システム的なニーズ 銀行内外の多種多様な大量データをリアルタイムに取り入れたい。それらデータから学習し、分析してインサイトを得て、リアルタイムなアクションにつなげたい。アクションといっても、不正利用の停止、顧客への通知、顧客との対話などいろいろある。また、機械学習のモデルや実行されたアクションについて説明可能な状態を維持しなければならない。また、性能や各種指標が記録され、フィードバックされている必要がある。

  • 銀行のAI ユースケース上位3つ(2018年)
    • デジタルアシスタント(カスタマーサービス他):$2.9B
    • 不正利用調査:$1.9B
    • リコメンドシステム(セールスその他):$1.7B。
    • しかし次から述べるように、潜在需要はもっと多い。
  • 詐欺 標的型攻撃メールによる詐欺(BEC)で$12.5B もの損害が生まれている。詐欺行為を発見するには教師あり学習だけでは不十分。教師なし学習と組み合わせたり、データサイエンティストの対応を合わせたりすること。また、データは一社だけでは用意できない可能性があるので、コンソーシアムを組んで共有するとよい。
  • コンプライアンス対応 マネーロンダリング防止には$25.3B のコストがかかっている。第三者データの突き合わせに手間がかかっている。高度なRPA や、画像・テキストの分析が有効だが、規制上すべてを自動化してはいけない。
  • 本人確認 口座開設に平均で5〜7 日かかっている。物理的な本人確認が行われることや信用調査所に依存していることのコストがリスクに見合わない。身体的生体認証だけでなく、行動的生体認証が行われ始めている。SNS なども含めた様々なデータを元にハイブリッドな分析を行い、本人確認に利用するのがよい。
  • 新しい信用情報 インドで利用されているLazy Pay のような個人ローンアプリは、行動分析や予測分析により独自の信用情報を構築することで、少額の個人ローンを素早く利用できる。
  • チャットボット/音声アシスタント 顧客のストレス軽減のため。旧来時間がかかっていたタスクを自動化することを優先するべきだが、導入が進むことで、頻度の低い処理にも適用されるようになってきた。ただし、快適に使えるためには高度な自然言語処理が必要。
  • 顧客は自動化・AI 化をそこまで望んでいない。「有人対応がロボットやAI に置き換わってしまったら別の銀行に乗り換えるか?」に「乗り換える」と答えた人が30%、「乗り換えるかもしれない」も30%。ただし、小さい金融機関の顧客や、35〜54 歳の世代は、許容する率が比較的高かった。
  • AI を採用する企業側の課題は、上から順に「コストが高すぎる」「上位層が、AI 技術は未成熟と考えている」「ガバナンスや規制対応に不安がある」「従業員が抵抗する」「業務的に役に立ちそうにない」など。金融特有の課題は「データが分散しており分析できる状態でない」「規制に対応するガバナンスや透明化が難しい」「組織内の抵抗感」。
  • ウォッチすべき技術トレンドは、「コーディング不要」「業務プロセスの高度な自動化」「認知処理による可視化」
  • ウォッチすべき適用範囲は「詐欺防止のためのコンソーシアムデータ」「代替ビジネスと個人ローン」「国による新しい身分証明システム」「国際送金」「パーソナライズされたサービス」「簡易な支払いシステム」「対話型AI」「融資のための信用格付け」
  • まとめ 金融サービスにおいて、運用の効率化や、規制準拠や、カスタマーエクスペリエンスなどの問題を解決し、デジタル変革を実現するためにAI は不可欠だが、AI の導入はフェーズ分けして、小さい成功を得ながら進めるべき。導入障壁は顧客の信頼、レガシー技術、規制側の不信、予算などが複雑に絡み合うが、それらはきちんと解決されなければならない。

4. AI: THE FORCE BEHIND DIGITAL TRANSFORMATION IN HEALTHCARE

  • IDC 医療部門のリサーチVP によるセッション。
  • まとめ ヘルスケア業界のデジタル変革と成長のためにはAI が不可欠。自由度の高い、ハイブリッドな情報システム展開モデルが生まれてきている。AI には採用障壁があるが、乗り越えることは可能。
  • 米国の保険システムが、量ベースから価値ベースへとシフトする中で「医療への手軽なアクセス(リモート診療、医療機関の相互連携)」「経済的・医療的なリスク管理(臨床成果管理、プロセス最適化)」「データや情報の運用可能性(契約管理、医療保険ネットワーク管理)」「顧客中心主義(ひとりの人間としての患者)」を実現するAI ユースケースが重要。
  • IDC のレポートによれば、米国医療プロバイダーのAI 支出見通し $1.8B(2018)→$3.8B(2020)→$6.1B(2022)
  • 医療機関の24%、保険者(連邦政府、民間営利保険会社、個人など)の16%が、デジタル変革の戦略にAI が不可欠と回答。一方で、医療機関の25%、保険者の60%が、AI 関連の取り組みが実稼働中または検証中と回答。医療機関の方がデータも複雑であり、変革の難易度も高く、課題が多い。
  • 最初は典型的なAI 利用パターンから導入が進む
    • 予測(健康状態や薬効など)
    • 対話(バーチャルアシスタントやチャットボットなど)
    • 認識(診断支援)
    • プロセス自動化(レポートやカルテの自動入力など)
  • AI を組み込んだ情報システムは階層化されているとよい。 核となるコグニティブAI プラットフォーム→集約・前処理済みデータ →組み込みアルゴリズム&すぐ利用できるアプリケーション →API を通した個別アプリケーション開発基盤
  • 「規制準拠・多数のステークホルダー・医師の理解・誇大宣伝のソリューション・文化的な抵抗感」といった課題にこたえ、信頼を積み上げていくことの難しさがある。基本的なガイドラインは、「関係者全員の意見を踏まえ、現実的なゴールを設定し、地域差を無視せず、予測の変更管理を行い、医療診断と技術の調和をとり、実施と検証を繰り返し、アルゴリズムを説明可能にして信頼を得る」こと。
続いて、同じく1日目に開催されたワークショップ「エンタープライズAI の配備と拡大」のセッションをご紹介しま す。

5. DEPLOYING A DIGITAL EMPLOYEE

  • 対話型AI のソリューションやIT サービスを提供する企業function AI のCEO による「デジタル従業員」についてのセッション。
  • デジタル従業員は、単なるチャットボット(事前に登録したキーワードにマッチしたときにスクリプトを動かすという単純な仕組みで、FAQ 回答など限られたタスクのみを処理できる)を超えるものとして定義した。顧客と対話して顧客を理解する、人間の感情を関知して反応する、自分の経験から学ぶ、定型的な業務要求を処理できる、問題解決を行える。
  • デジタル従業員はエコシステム。顧客との対話(音声、チャット、メールなど)だけでなく、CRM・チケット管理システム・RPA などとの連携もするし、企業のデータ資産からの機械学習や、音声認識、画像認識、テキスト分析、感情認識、業務プロセス可視化といったAI プラットフォームとの連携もする。
  • デジタル従業員のユースケース
    • 顧客対応(デバイスをまたがる対応/多言語対応)
    • 社内向けオンラインサポート(IT サポート/人事労務サポート)
    • E コマース(在庫知識/パーソナライズされた限定オファー)
    • ソーシャルメディア対応(コンテキストや感情を理解した返信)
  • デジタル従業員の処理の複雑さは、「意味的データモデル<自然言語処理<音声処理<エピソード記憶処理(カスタマーセンターでいつも同じ担当者が対応してくれるイメージ)<予測分析」。複雑になればなるほどAI/機械学習が効果的という認識。
  • デジタル従業員を導入するには、As-Is、To-Be、ギャップの分析が必要。As-Is とTo-Be では、業務プロセスの可視化、インフラのアーキテクチャ分析、プロセスとツールの対応付けをする。ギャップ分析では、自動化/データフロー/プロセス最適化の余地をすべて検討した上で、不足するツールの洗い出しを行う。
  • 変化するビジネスに対応してデジタル従業員を継続的にトレーニングし続けることが課題となるので、その方法やデータソースもあらかじめ検討しなければならない。
  • デジタル従業員の効果を測定するメトリクスの例 利用率、初回解決率、リテンション、意思検出の成功率、感情分析の成功率など。利用者アンケートがなくても測定可能な数値がよい。

最後に、2 日目に開催された本会議より、キーノートセッションをご紹介します。

6. ALGORITHMIC MODELS OF INVESTOR BEHAVIOR

  • MIT 金融工学研究所のディレクターによるセッション。
  • MIT CSAIL(コンピューター科学・人工知能研究所)でFinTech 研究も行われている。そのうちの一つ、投資家の振る舞いに関する研究を紹介
  • ダウ平均や日経平均のような指数ではなく、著名人のポートフォリオを指数にしたらどうなるか。また、そういう指数をAI で自動算出できるか。そのようなAI の可能性を2001 年に論じていた。
  • 損失回避や過剰反応といった、生産性だけで測れない投資家の振る舞いをシミュレートするには、人工知能というより人工人間性が必要ではないか、という仮説を立てている。
  • CSAIL のFinTech 研究では、「トレーダーの心理研究」「機械学習による投資モデル」「機関投資家のサーベイデータ」の3 点を研究中。
  • トレーダーの心理研究では、心電位や血流、皮膚コンダクタンス反応などの生体センサーを付けたまま投資してもらい、投資行動との関連を調査したりしている。将来的には、ウェアラブルデバイスで心理状態を測定し、投資アドバイスに反映させるなどの応用が考えられる。

7. GETTING ON THE ROAD TO ARTIFICIAL GENERAL INTELLIGENCE

  • Unity Technologies(ゲームやAR/VR などの3D インタラクティブコンテンツの開発ツールを販売する企業)のAI・機械学習VP によるセッション。
  • インテリジェンス(知性)とは、知識やスキルを獲得し、適用する能力。
  • 生命システムの知性は、「食べること、食べられないこと、殖えること、物理状況を検知すること、環境に働きかけること」のための生体センサーと判断処理。
  • Unity の3D エンジン+物理エンジンで現実世界を模倣することで、AI・機械学習の学習環境とする研究を進めている。その一環で、Google 傘下のDeepMind が、2018 年9 月に人工知能の研究でUnity と提携した。
  • 自然界の学習方法は強化学習と言われるもの。環境を観測し、アクションを起こし、結果に対して成功/失敗の報酬付けを行うことを繰り返す。Unity で実装した例:道を渡るニワトリゲーム、障害物のあるサッカーゲーム。
  • 他にも、外的動機付け(何らかのタスクに成功すると報酬が得られる)と内的動機付け(好奇心を満たすと報酬が得られる)をモデル化した研究も行った。コーギー犬のパポというキャラクターを調教して賢くするというもの。利用した機械学習エージェントライブラリはOSS として公開済み。https://github.com/Unity-Technologies/ml-agents

8. AI AT WORK: FROM PROGRAMMING TO LEARNING

  • IBM の認知プロセス変革サービスチームのGM によるセッション。
  • ムーアの法則、メトカーフの法則(ネットワーク効果)に続くWatson の法則として、「データ量は12 ヵ月で2 倍になり、それに伴って知識量も増大する」といわれるようになるだろうと考える。
  • すべての産業、すべてのドメインでデータが重要になった。2016 年のウェアラブルデバイスの出荷数は1 億台、Google の1 日の検索数は35 億件、年間で撮影されるMRI は8 千万枚、15 分ごとに生成される天気予報のエリア数は22 億ブロック、電子メールの送信数は毎秒260 万通、2016 年に新しく記録されたソフトウェア脆弱性は1 万件、マルウェアの総計は6 億体、YouTube にアップロードされる動画は1 分あたり合計500 時間。
  • AI が解決する問題の範囲。2010 年〜2016 年は「狭いAI」、2016 年〜現在は「広いAI」の時代。「汎用AI」の時代が来るのは2050 年以降になるとみている。
  • IBM Watson の適用事例紹介。ソフトウェア会社のAutoDeskではカスタマーサポートのレスポンス時間を改善。エネルギー会社のWoodside では熟練した専門家の知識に効率的にアクセスできるようにしたことで調査時間の75%を削減した。
  • 他にも、社会的な利益のためにAI を活用していくことがIBM の使命。

9. まとめ

本イベントそのものが企業の経営層向けということもあり、1日目にExecutive Summit が設定されていましたが、内容はIDC の調査を元に、データとともにトレンドを説明するというもので、とても説得的な内容でした。そして、ビジネスモデル変革のセッションで語られていた「AI に向けての戦略」と「AI とともにある戦略」の2つの捉え方が明確に区別して語られたのは新鮮でした。 2日目以降の分科会ですが、「AI と医療」「AI と製薬」の2 つに重点が置かれていました。セッション数の多さもそうですが、医療機関や製薬会社の実際の取り組みを紹介するセッションが多く組まれていました。別のテーマの分科会(IoT やデジタル従業員など)では、ベンダーによるソリューション紹介やパネルディスカッションが比較的多く、企業側の取り組みが語られることが比較的少ない構成となっていました。医療・製薬の分野でのAI の応用が重要視され、また実際に(特に精度向上の点で)成果を上げているということが言えると思います。スケジュールの都合上、分科会には参加できなかったため、内容をお伝え出来ないことが残念です。ですが、これからもこの分野は注目を続けていきたいと考えています。 後編は大手企業(IBM、Dell、Oracle、Accenture など)やスタートアップを含む、多くの出典企業の中から、機械学習プラットフォーム、RPA、検索プラットフォーム、対話型AI を含む13 社についてレポートいたします。